献辞 だれかのあなたに
タイムトラベルで会いにいく

しぐれなら
雫はしずかに

小夜中ならばふさわしいさよならを

追憶、潰える
いずれまた

月草の薬に消えたひと

移し心と待ち惚け
残された者の空ははなだに染まる

あなたに愛されない藍だった
染み抜きしてもなくならないもの

去れば届く
恨まれても護れたもの

いつだっていびつ
墨色の罪

梅が香で呼ぶ
たとえ生きていたって、見えない夜に

追ってはいけない
常磐/草葉の陰/時輪

赦されるなら新月の夜に

梅が香残して

花と共に去りぬ、雪と共に来たりぬ
そしてまた、花と共に

記憶を覆っていく花吹雪/さよなら

梅守り鶯

一角獣座の筆跡

一途に探した瓶から零れたのはrye
その髪はぬばたまのはずなのに

嫌われるやさしさが致死量に達するとき
この瞬間の約束/全てを知らなくても

たった一瞬目が合うだけでよかった
板の間で横たわり浴びるmoon ray

花火が部屋を照らすとき
まぼろしが真実になった

影絵でいいから会いたかった

葉桜のバス停
現像と幻像のあわい
白日夢は水面みなもに宿る
夏のうつしみ

こもれびが彼の影絵をつくる

薔薇の線画
ふたつの輪は二度交差する

さみしさはコマ送りの記憶

想いが地縛霊になっても

玉の緒は外つ国へいく

魂は連れて行けない
澱とは思い出のこと

タイムトラベル、泣きながら
わたしはそっとしずかに消える

献詩 ふたたびあなたに
これを序章の結びとします






Illustration: Flowers&Plants & Canva
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