あの部屋の冷蔵庫の光に月は勝てない
なでつけた髪と骨張った手の甲
海蝕洞から雪を見ていた
その記録はガラス
海際に埋めた
喉に頼る

声なき夜
満月から逃げる
刹那の水紋/逃げる鯉
その暖かさに蝕まれても
ささやかな祈りを捧げて細雪
フロントガラスに夜景を閉じこめて


まばらにまばゆい

迫りくることばがせめぎあうこころ
ねがうそばから消失していく
小雨が知らせに来るまでは
雪の駅に佇んでいた
なぐさめの喧騒
狭霧の湖

薔薇の硬度
洞窟と潮風と驟雨
フローライトの封蝋
天文台のタイプライター
その伝言はフェルメールブルー
蝕に千年間の説明をせがむのだった

Illustration: Flowers&Plants
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