屑籠のなかのものがたり
粉々にされた詩を拾いつつ
その海は語らせてくれない
臘梅に臘雪
硬質なマフラー
心臓がその香りを憶えている


蜜のような髪先
きみの背中を追う花びら
湖鳥と水製王冠ミルククラウン
さくら散る速さくらいで
一雨ひとあめの熱
ボートと桜人

花弁は破片

夜空に散らばる桔梗咲き
3番目の音がやさしい
とけあわない泡たち
血液を分け合わない
虚空の密度
あの店の前は通らない


それぞれの水平線
声を湖面にたら
半睡の保管庫
薄い寝不足
鼓膜に夢の移り香
  牌の散らばるテーブルで



恋の関係ではうまくいかなかったけれど
伴侶パートナー 探しをがんばりません
愛しあう人がいなくても楽しい日々
《すき》への経路は恋だけではない
入り組んだ恋を分解してみたら
経済的に自立するドゥーリトル氏


イライザは伴侶にヒギンズを選ばない
今に見てろよという執着を捨てて
棚の一番上にも自分で届く
ほとんど同じ目線の高さ
恋愛的両思いを皆が願うわけではない
たのしかったよ、偽物といわれてもね

 at heart 

性交が愛の証ってあなた言ったでしょう
本能と呼ばれているもの
だれのことをも待たないベッドで
途中でやめる権利は常に絶対にある
理由に愛を持ち出さないで
あなたの気持ちに応える私なりの方法


誤解を解かずに死んでいく人々
尊さ/天上天下に我ら唯、独つの存在
我ら——心臓のありもなしもすべての
歩み寄らないでも何度でも書こう
語ったことの蓄積
罪の意識に突き動かされて



虹の臥所ふしど
龍になるための鯉じゃない
箒の調べ
あのとき雨は案内していた
星躔のモチーフ
夏の暖炉に棲みついた


夜宮の出口は朧である
埃を纏う光沢
先代の本が縒れている
この技術を魔法と呼ぶ者たち
享楽的拷問を夢想された少女の数だけ
月までの蔦

飛雨と飛龍

《語られる》から《語る》へ
英雄として人間性を奪われた人間のこと
まだ知らない視点から軽蔑される
瑞雲の訪れ
予知夢めくるめく
冥王を納めた薬箱


嘘の眷属うから
靴磨きで心を整える真夜に
呻くように光っていたね
会葬者に白蛇の殻がいた
悪役さえも引き受けてしまう闇は
《無い》に気づくのはむずかしい



流星群の下で渡した予備のボタン
銀漢は迷宮だから会えないんだ
守護するように沈香
透明を通してつながっていても
さよなら想望
忘れ草の奥へ離れゆく形影


まよなかの芙蓉にゆびさきで触れる
死後に想像されるありもしない恋愛
雪は記憶の声までも吸い込んでいく
粉雪のような呼気
望みを絶たれた目は伏せられる
幾重にも病葉わくらば

曖昧ファジー哀歌エレジー

幾重にも邂逅わくらば
互いの勾玉に触れた
どうして見つけられると思う
目を開けない君を前にして
 幻影は真実から逃げ惑う色をする
シンメトリーの痕


《死後》の眷族
波紋は消えた
泣き疲れたときだけ仄見える
奇跡をたせて
残り香に呼ばれよみがえる
蜻蛉玉のねむる抽斗


sozai:
fauxism-org.deviantart.com
Emily Bernal on Unsplash
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